自閉症スペクトラム(ASD)

自閉症スペクトラム(ASD)

 発達障害の一種であり、古い言い方では「アスペルガー症候群」「自閉症」と呼ばれていたものです。

平たく言えば「空気を読むのが苦手でこだわりが強い」という特性であり、人の表情が読めず曖昧な指示や冗談が通じない、社会的な相互関係や年齢相応の友人関係が結べないといった特徴があります。

ここで言う「曖昧な指示」は、この特性を持っていない人には曖昧には思えないものも含まれます。例えば、「この仕事はなるべく早めにやっておいてね」と上司が指示を出したとします。

この指示はASDの方にとっては「何日の何時までに終わらせればよいか」という具体性に欠けており、何週間経っても仕事が終わらないことで上司に怒られてもなぜ怒られているのかわからず、

上司にとっても本人にとっても大きなストレスになる…といったトラブルになることがあります。また、表情の変化やその場の空気を読むことが苦手であるため、

冗談や皮肉が理解できず字面のまま捉えて相手からすると場にそぐわない返事をしていたり、他の人が傷つかない場面で傷ついたりすることで人間関係が築きにくい状況にも陥りがちです。

食べ物の食感や匂い、服や靴の質感などに敏感であることも多く、「子供のころ上履きの締め付けがどうしても嫌で履けなかった」「タートルネックが首に触れるのが嫌で着られない」といった経験談もよく聞かれます。

また、特定の物事へのこだわりが強く、こだわりを持った物事の手順を一つでも乱されるのが我慢できなかったり、一つの分野に突出して秀でた記憶力や才能を発揮したりする場合もあります。

こういった過敏性やこだわりも含めて、他人から「変わった人」という評価を受けてしまいがちなのがASDであり、人とのコミュニケーションにおいて疲弊しやすい傾向があると言えます。

発達障害の頁でも述べましたが、一番大切なのは「何が苦手なのかを自分で理解し、他人に伝え、ストレスの対処法を見出すこと」です。

たとえば前述の「なるべく早く」という指示が通じないという状況については「遅くとも月曜の10時までに」という具体的な指示に置き換えることでトラブルを防ぐことができますし、

「融通が利かない」「食べ物の好き嫌いが多い」と家族内で揉めがちになっている場合にはそれがわがままによるものではなく発達特性によるものだと理解されれば双方の折り合いをつけやすくなります。

また、人とのコミュニケーションに疲れた時に自分の心を落ち着けることができる場所、行動、環境を準備しておき、しんどくなりそうな時にリフレッシュすることも大切です。