強迫性障害

強迫性障害

 出かける前に忘れ物がないかチェックし、ガスの元栓を閉め、玄関の鍵を閉めて安全を確認する。帰ってきたら手洗いうがいをし、ごはんを食べたら食器を洗って清潔を確認する…日々の生活は確認にあふれ、それによって守られています。

しかし、何度確認しても「大丈夫だ」と安心できなかったとしたら?自分でも無意味だとわかっているのに何度も確認してしまう、例えばついさっき玄関のドアの鍵を確認し、ドアノブを回して開かないことを確認してから歩き始めたはずなのに、

また戻って鍵を確認したくなるような症状(強迫症状)、疲れている時などに一度は体験したことがある方も多いのではないでしょうか。このような強迫症状を毎日、何度も、何十分、もしかすると何時間も行うようになったとしたら、やがて疲弊し生活に支障をきたすようになるでしょう。

この状態が強迫性障害です。症状の出方は人によってさまざまで、先ほど説明した確認行為以外にも「部屋から出る時にカーテンに触れた感覚がしっくりこない→しっくりくる感覚が得られるまで何度もカーテンを触り続ける」といった「しっくりした感じ」を求めて何度も同じ行動を繰り返す場合もあります。

症状の程度も人によってさまざまで、症状が重い方になると自分の体が清潔かどうか気になって一日に何度も入浴し、へとへとになってほとんど外出できなくなるケースもあります。このような強迫症状を自分が行うだけでなく、周囲に強要する場合もあります。

これを「巻き込み」と呼び、鍵などの確認を家族にも行わせる場合や、周囲の人に必要以上に頻回の手洗いを強要する場合などがこれに該当します。清潔に関する強迫症状を呈する方は、新型コロナ感染症の流行により、以前よりも増えてきた印象があります。

程度の軽い強迫症状であれば治療することなく生活パターンを変えることで対応できますが(例えば出勤前に鍵の確認を10分程度行う方なら以前より10分早く起きれば解決するかもしれません)、ご自身もしくは周りの方が疲弊している場合にはやはり専門的な治療を行ったほうが良いでしょう。

強迫性障害の治療には大きく分けて二つの治療があり、どちらか一方を行う場合と二つを組み合わせる場合があります。一つ目は薬物療法です。抗うつ薬のうち、SSRIと呼ばれる分類の薬を継続的に内服することで強迫症状を和らげることができます。

もう一つは暴露療法という方法で、こちらは行動によって強迫症状を和らげる方法です。「どうしてもこれがしたくなってしまう」という強迫症状をリストアップし、あえてその強迫症状を行わない状態で生活することで「しなくても平気だ」という感覚を得る方法です。

一見すると根性論のようにも思えますが、うまくいけば意外とすっきり強迫症状が治ってしまう場合もあります。ただ、暴露療法は患者様にとって行うこと自体が大変勇気が要る治療です。医師に相談しながらその方その方に合った治療法を見つけていくのが良いでしょう。