双極性障害

双極性障害

 やや古い呼び方では「躁うつ病」と呼ばれていた疾患です。テンションが上がっている時期(躁状態)と気分が落ち込んでいる時期(うつ状態)が波のように繰り返し訪れ、人間関係や社会生活に支障をきたしやすい疾患です。

躁状態の時には夜眠らなくても疲れを感じず、仕事や趣味に没頭しどんどん活動できるようになります。同時に他人に攻撃的になり、無計画な浪費や(キャッシュカードの上限まで使ったり、高級車の購入や多額の株取引をしたりするケースがあります)

突発的な旅行、服装が急に派手になるなど、行動の変化が見られます。もちろんこの時家庭内や職場内などでトラブルになりやすいのですが、周囲は困っている一方で本人は「どんどん活動できて調子が良い」と感じていることも多く見受けられます。

このようなエネルギーを全身から休みなく放出し続ける時間はいつまでもは続きません。躁状態が過ぎ去った後には気分が落ち込み元気がなくなるうつ状態がやってきます。

気分が落ち込み、意欲が低下し活動できなくなるこの時期の症状はうつ病とよく似ており、この時期の症状だけ切り取って見るとうつ病なのか、それとも双極性障害におけるうつ状態の時期なのかの区別をつけるのは至難の業です。

両者の区別をつけるための唯一の鍵は「今までに躁状態になったことがあるかどうか」ということです。抑うつ症状がある患者様にこれまで躁状態になったことがあるかどうか伺うことがありますが、この時患者様自身が「そんなことはない」と思っていたとしても、

前述の通り躁状態を「調子が良い時期」と捉えていることもしばしばあります。そのため、一旦はうつ病と診断していても、治療を行う中で双極性障害である疑いが出てきた場合にはご家族など近しい関係の方にこれまでの様子を伺うことがあります。

そこまでして双極性障害とうつ病の区別をつける必要があるのは何故かというと、使う薬が全く異なるものだからです。双極性障害に使う薬剤は気分安定薬と呼ばれ、抗うつ薬とは種類も効果も副作用も異なります。

また、双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。その違いは躁状態の時のテンションの高さがどれくらいかという部分にあります。

前述の例にあった「他人に攻撃的になる、無計画に浪費する」などの症状が強く目立つタイプをⅠ型、症状がさほど目立たず自分も他者も「少しテンションが高い期間」くらいの認識で済んでいるケースをⅡ型と呼びます。

これだけ聞くとⅡ型のほうが問題が少ないように思われがちですが、躁状態が目立たないだけに正確な診断がつくのが遅れ、適切な薬物治療になかなかたどり着かないケースもあります。正確な診断をなるべく早く導き出すことが治療の近道なのです。