統合失調症

統合失調症

 「統合失調症の症状ではないか」と患者様やご家族が気づいて来院されるきっかけとなりやすいのは幻聴(自分の悪口や、自分の行動を実況中継したり口出ししたりする声が聞こえる)、

独語(誰もいないところに向かって話している状態。幻聴と会話している場合もあります)や被害妄想(盗聴されている、誰かが自分に危害を加えようとしているといった内容)などです。

これらの症状は陽性症状と呼ばれ、幻聴や妄想に基づいて強く興奮される場合も多いことから統合失調症において目立つ症状といえます。しかし、これらの症状は統合失調症以外の疾患(せん妄、双極性障害や妄想性障害など)でも見られることがあります。

統合失調症にしかない特異的な精神症状は陰性症状と呼ばれ、感情の動きが単調で鈍くなり、意欲が低下し引きこもりがちとなり、思考がまとまらず他人から見て意味が通らない言動をしている状態を指します。

陰性症状がある場合は極めて統合失調症の疑いが強いと判断できます。また、気分の落ち込みや不眠を併発することもしばしばあります。

こういった明らかな陽性症状、陰性症状が現れる前、発症直前に「なんとなく不安、眠れない、怖い、外出したくない」という前駆期と呼ばれる時期が見られることもあります。

統合失調症の好発年齢は10歳代後半~35歳前後であり、該当する方でこういった症状が出てきた場合には一度専門医に相談することをお勧めします。

統合失調症の治療に用いられる薬は抗精神病薬と呼ばれ、非常に種類が多く多彩です。どの薬も幻聴や妄想を抑える作用がありますが、興奮を抑える作用が強いもの、不安感を抑える作用が強いもの、意欲を持ち上げる作用が強いものなどそれぞれに持ち味があります。

朝飲むか夜飲むか、一日何回飲むかもそれぞれ違い、副作用の出方も違います。自分に合った薬が見つかって症状が落ち着いた時、患者様の誰もが「もう薬は要らないのではないか」と考え始めます。

ここで内服を中断した場合、症状がぶり返す可能性は約7割と非常に高確率です。統合失調症の原因について詳しいことはまだ完全に解明されていませんが、脳の神経が炎症を起こし、傷ついていくということはほぼ間違いない事実です。

症状がぶり返すたび神経は傷つき、症状が起きる前にはできていた思考、仕事や作業ができなくなっていきます。全ての抗精神病薬に共通している効果は「神経を保護すること」です。症状が落ち着いても再発を防ぐため気長に薬と付き合っていくことが必要な疾患です。

統合失調症治療において重要なのは薬だけではありません。疲れを貯めないこと、ストレスを貯めないことも発症、再発しないために重要です。実際、進学、就職、失恋、出産などのストレスがかかったタイミングで統合失調症を発症、再発するケースは多く見られます。

統合失調症に限らず全ての精神疾患にいえることですが、「無理をしないこと」が大切です。