うつ病、適応障害

うつ病、適応障害

 うつ病と適応障害の主な症状は前のページで紹介しましたが、うつ病と適応障害の違いは一体何でしょうか?

答えは「症状を引き起こす明らかなストレスがあるかどうか」です。明らかなストレスが存在している場合を適応障害、(発症当初は症状の引き金を引くストレスがあったとしても)明らかなストレスが存在していないのに症状が続く場合をうつ病と呼びます。

適応障害の場合は原因となっているストレスがなくなれば症状は治まります。例えば、大学受験のストレスが原因で気分が落ち込んだり眠れなくなったりした場面を考えてみますと、受験が終わるとともに症状が治まった場合には適応障害、

無事に入学し大学生活が始まってもなお症状が続いている場合はうつ病の疑いが強いと考えて差し支えありません。しかし、ストレスの中には一朝一夕に解決せず、いつ終わるかわからないものもあります。

例えば職場の人間関係や家庭の問題などは長期に渡って続くことが多く、その症状がうつ病によるものか適応障害によるものか区別することにさほど意味はありません。

それぞれの症状に合わせた薬物治療およびストレスを減らすための環境調整、生活リズムの調整を行います。

抑うつ症状を治すにあたって、薬で解決できる部分と環境で解決できる部分は半々であり、薬さえ飲んでいれば大丈夫というわけではありません。症状が強く疲れ切っている場合には仕事を休むなどして心と体への負荷を減らす必要があります。

薬物療法の軸は抑うつを治すための薬、大きくわけて抗うつ薬と抗不安薬の二種類があります。混同しやすい名前ですが、両者には大きな違いがあります。

抗うつ薬:効果が出るのが遅く(数日~数週間)、毎日の服薬が必要だが依存性や耐性はつかない

抗不安薬:効果が出るのが早く(1時間程度)、頓服で使用することができるが依存性や耐性がつきやすい

それぞれの特徴を考えたうえで、どちらか一方を選択して使うのか、もしくは併用して使うのかを決めていきます。抗うつ薬にも抗不安薬にもたくさんの種類があり、それぞれ効き方、飲み心地が違いますので個人個人の症状に合わせた薬を選ぶことが重要です。

たとえば日中お仕事をされている方なら眠気が少ない薬を選ぶ必要がありますし、食欲や体重が落ちている方なら食欲を増進させる効果に注目して選ぶ必要があるでしょう。

症状が落ち着いてきた時、いくつか注意しなければならない点があります。まず、急に無理をしないことです。前述の通り、症状が落ち着いてきた時、休職などで心と体を休めることができる環境になっている方が多いと思います。

うつの症状を足の骨折に例えるとすれば、荷物を持って走っていて骨折した人が荷物を下ろし(=休職)、ギブスをつけて(=薬物療法)休んでいた状態です。この骨折が治った瞬間、急に荷物を持って走れるでしょうか?

それではあっという間に無理がいき、息は切れるし怪我も悪化するでしょう。大切なのは最初は軽めの荷物(もしくは荷物なしで)ゆっくり歩いて体を慣らし、徐々に負荷を上げていくことです。

うつ病や適応障害が治り始めた時にも同じことが言えます。急にフルタイムで復帰したり、毎日仕事をしたりすると無理がいって症状がぶり返すことがあります。短時間勤務から始める、復職支援プログラムを使うなどして心と体を徐々に慣らしていきましょう。